最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)665号 判決 1965年4月30日
上告人
赤坂勘次郎
右代理人
成田篤郎
右復代理人
成田哲雄
被上告人
大津密
被上告人
大津毅
主文
原判決中控訴人赤坂勘次郎の控訴を棄却した部分を破棄する。
右部分につき本件を原審仙台高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人成田篤郎の上告理由第一点について。
原判決引用の第一審判決は、「昭和三四年一〇月八日頃原告(被上告人)毅と被告(上告人)との間において原告(被上告人)密所有の売市の土地(第一審判決添付第二目録記載の土地)を本件六五万円の債務の元利金並びに約束手形金債務の代物弁済として提供してそれらの債務を消滅せしめる契約が成立した」旨の事実を認定、右代物弁済契約により本件債務が消滅した旨判示したものである。
しかしながら、債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によつて生ずるものと解すべきである。原判決は、前記認定事実のみで直ちに本件債務の消滅を肯定したのは違法である。原判決中控訴人赤坂勘次郎(上告人)の控訴を棄却した部分は破棄を免れず、なお叙上の点に関し審理判断をする必要があるから、原審仙台高等裁判所に差し戻すべきである。
よつて、その余の上告理由についての判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)